職場の熱中症、対策不備なら「数千万円」の損害賠償も
企業が取るべき法的新基準
本格的な夏を迎え、企業に強く求められるのが「職場における熱中症対策」です。もはや熱中症は単なる体調不良ではなく、企業の「安全配慮義務」に関わる重大な労務リスクとなっています。
実際、熱中症で従業員が死亡・後遺障害を負った過去の裁判では、「客観的な暑さの評価を怠った」「体調不良の兆候を見過ごした」として企業の安全配慮義務違反が認められ、数千万円規模の高額な損害賠償を命じる判例が複数出ています。
厚生労働省の最新ガイドライン(令和8年3月発出)では、事業者はまず「熱中症リスクの評価(WBGT値の把握)」を行った上で、その結果に基づき、以下の「7つの措置」から適切な対策を選択して実施することが求められています。
■ ガイドラインが定める「7つの熱中症予防措置」
- 1. 労働衛生管理体制の確立等 衛生委員会等での労使の話し合いと周知、各種管理者の選任、報告体制の整備や作業手順・作業計画の策定を行います。
- 2. 作業環境管理 発熱体への遮へい物や簡易な屋根の設置による「WBGT値の低減」、および速やかに利用できる「休憩場所の整備等」を行います。
- 3. 作業管理 作業・休憩時間の確保(作業時間の短縮等)、計画的な「暑熱順化」、水分・塩分の定期摂取、服装着用の工夫、プレクーリング、頻繁な「作業中の巡視」などを行います。
- 4. 熱中症リスクの評価・検討 WBGT値に作業強度等の補正を行ってリスクを見積もり、基準値を超える場合は、環境・作業管理や高齢者・持病(疾病・障がい)のある方への作業時間短縮等を検討します。
- 5. 健康管理 健康診断結果に基づく対応、日常の健康管理、作業開始前の声かけなどによる「作業従事者の健康状態や暑熱順化の状況等の確認」を行います。
- 6. 労働衛生教育 熱中症予防管理者、職長等、および作業従事者それぞれに対して、簡単な教材でも繰り返し参照できる「労働衛生教育」を実施します。
- 7. 異常時の措置 熱中症が疑われる症状が出た際は、WBGT値等にかかわらず速やかに作業を離脱させ、身体冷却や水分・塩分補給、迅速かつ的確な医療機関への搬送(対応計画の運用)を行います。
熱中症予防対策は、単に自社の従業員だけでなく、同じ現場で作業に従事するすべての労働者に対して一体となって講じるべき労務管理の最重要事項です。
「知らなかった」では済まされない時代です。適切なリスク評価の進め方や、社内体制・対応手順の整備については、ぜひ当事務所までお気軽にご相談ください。


